『魔王』と『危険な関係』の、ある名場面



「魔王」第7話、領(大野智)と真紀子(優香)の病室でのシーン。芹沢刑事(生田斗真)が去った後の、2人きりの10分近くにも及ぶ涙のシーンでした。一瞬も目が離せなかった、2人の愛と葛藤が渦巻く名場面です。これを見終わった後、99年に放送された豊川悦司主演の「危険な関係」というドラマの、あるシーンを鮮烈に思い出してしまいました。そのシーンは「危険な関係」第7話。そうです、偶然にも同じ第7話なのです。
共に主人公が相手役(←「魔王」なら芹沢直人「危険な関係」なら速水有季子)以外の重要な登場人物と1対1で繰り広げる中盤の山場です。このシーンにおける領とトヨエツ演じる魚住新児、そして真紀子と篠原涼子演じる若林ちひろは全く同じ状況で、全く同じ立場です。ここまで同じ状況なのに、2人の主人公に投げ掛けられる言葉、思いが、それぞれこうも真逆になっている事が衝撃でした。
同じなのに対極な結末を向かえてしまう2つのシーン、4人の登場人物。特に、真紀子とちひろの2人の女性を分ける物は何なんでしょうか。下記はそれぞれの女性の台詞の重要部分の抜粋です。


成瀬真紀子
「魔王」



いいの、ずっと前からわかってた。


あなたが本当に優しかったから。


あなたは私を本当の姉として、いつも気遣ってくれた。


精一杯『領』でいようとしてくれた。


…男の子が泣いちゃダメでしょ、領は小さい頃から泣き虫なんだから。


警察が何を調べてるのかは訊かない、あなたが何をしようとしてるのかも。


だって、あなたを信じてるから。


亡くなった領が信じたように。


あーあ…さっきの、友達から貰ったお気に入りだったのにな〜。


きっと、あなたの目には綺麗な夕陽が映ってるんでしょうね。


私の事なら大丈夫、もう独りでも生きていける。


領、お誕生日おめでとう。
若林ちひろ
「危険な関係」



私が好きになったのはあなたよ。


でもそれは『都築雄一郎であるあなた』なのよ。


そうよ、どんなにあなたが立派な事をしようと素敵であろうと、ニセモノだったら何の意味もないの。


本物でなきゃ誰も認めてくれないの!


だって知っちゃったんだもの、こんな部屋に住んでるって知っちゃったんだもの。


…よくも騙してくれたわね、調子に乗ってキスなんかして。


冗談じゃないわよ、何で私があんたみたいな貧乏人のニセモノなんかにキスなんかされなきゃいけないのよ。


もう夢物語はおしまいなの。


全部みんなにバラしてやるから!


私はね、本物しかいらないの。


人のお金や地位を盗んだだけのニセモノなんか全然欲しくないの!


ニセモノは絶対に本物になんかなれないのよ。


真実より愛と思いやりを選んだ成瀬真紀子。何よりも真実と“本物”が欲しかった若林ちひろ。この違いですね。この後、真紀子は領に優しく別れを告げ、ちひろは魚住に絞殺されてしまいます。魚住にぶつけた言葉はストレート過ぎるけど、ちひろは決して間違ってない。むしろ法律的に正しいのは(それが身に危険を及ぼすかは別として)後者が取った行動だっていうのが何とも悲しいな〜…と。
自分にこんなドラマチックな事は現実に起きないけど、もし自分だったら、真紀子とちひろのどっちになるんだろうな…とは考えました。信じてた人に欺かれたと一言に言うと酷い事だと思うけど、その中にある歴史が違うだけで、こうも結末が変わってしまう事もあるんですね。うーん…本当にこの2つのシーンは心に残りました。それにしても、ちひろといい池畑といい……

つくづく「バラしてやる」は死亡フラグですね。



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