カミソリは痛い、


水は冷たい、


薬は苦い、


銃は違法、


縄は切れる、


ガスは臭い。




生きてる方がマシ。










■元ネタ:映画『17歳のカルテ』



不安定な思春期で施設に入院した主人公スザンナ。

1年後の退院の前夜に起こる仲間達とのクライマックス場面を、

大野智、

町田慎吾、

秋山純、

そして元Jrの小原裕貴、

の“同級4人”キャストでおくるパロディ短編。










■配役■



リサ(アンジェリーナ・ジョリー)=大野智
【反社会性人格障害】
他人の権利を無視し、侵害する。悪事に関する悔悟の念が全くない。





スザンナ(ウィノナ・ライダー)=小原裕貴
【境界性人格障害】
対人関係、自己像、感情の不安定および著しい衝動性。成人期早期に始まる。





ジョージーナ(クレア・デュバル)=町田慎吾
【空想虚言症】
架空のことを細部にわたって、いかにも真実らしく語る。





ポリー(エリザベス・モス)=秋山純
【外傷後ストレス障害(PTSD)】
危うく死ぬような出来事を体験、強い恐怖、無力感、戦標に襲われる。










17歳のカルテ
〜Boy,Interrupted〜






真夜中。退院前夜なのに妙な不安感で寝つけずに裕貴はベッドを出た。
「?」
地下室から聞き憶えのある声がした。
「智?」
裕貴が急いで駆け下りて行くと3人がいた。
裕貴を見てニコッと笑う純。
座ってボンヤリする慎吾。
その間で壁にもたれ掛かって立っている智。その手には裕貴の日記帳。
「おまえの日記読んでたんだ。退院を祝って皆で朗読会だよ。優等生の賢い文章読ませて貰ったら少しは真面な頭になれるかもしれないじゃん」
「智・・・それ俺のだよ。返せ」
裕貴は怖くて震えそうになるのを必死で押し殺しながら言った。が、智は小悪魔のような微笑を浮かべて読み続けた。
「“人を魅了した智の瞳は今は虚ろなだけ”?“慎吾は医者や看護婦にだけ嘘をつく”?“純の明るさが意図的に見える。親しみやすく見せようと必死なのかも知れない”?へぇ結構鋭いじゃん」
「おまえ俺が嘘つきだってのかよ!」
突然キレて裕貴に詰め寄る慎吾。智は、冷めたように眺めながら言った。
「自分が治ったら今度は人を裁くのかよ?」
「智・・何でこんな事するんだよ?」
「悪者やってるだけさ。裕貴、全部おまえの望み通りだ。それに俺は言いたい事は直接言う。隠れて書いたりせずにな!」
激しい語尾と共にノートを裕貴に叩き付ける智。
「面と向かって言うんだ!アイツの時だってそうだ。俺が皆の代わりに言ったらアイツは死んだ。俺は悪役を演じた。おまえの望み通りに」
「どうして俺がそんなこと・・?」
「そうすりゃおまえは良い子でいられるから。おまえが皆の前で涙流して“ごめんなさい”すれば皆はおまえの勇気をホメ讃えてくれる・・・」
智の瞳が、鋭く光る。
「俺はおまえのカルテも見つけて脱走も手伝って金だってくれてやった!だけど俺はそんなおまえに金を貸しちまって!オンナ相手に小遣い稼ぎだ!」
「・・・!」
智の眼光に耐え切れずにとうとう裕貴は駆け出した。
「智!もうやめろよ!智やめろ!」
泣き出す純。すると慎吾が怒鳴った。
「黙れ純!黙れ!」
そんな二人を横目に、智は廊下の先の部屋に駆け込んだ裕貴を追いかけて呼びかけた。
「裕貴、俺が嫌いになったのか?」
「そうだよ!智!おまえなんか大嫌いだぁ!」
裕貴は泣き叫びながら、鍵の開かない窓を叩いた。
「もう自由だから?俺だって自由だ!おまえの自由なんかクソ食らえだよ!」
閉めたドアを蹴り破ってきた智を背に、裕貴は泣きながら窓を叩き続けた。
「崖っぷちの人間ばっかだ・・・」
裕貴へ問い掛ける智の呟きが次第に独り言のようになった。
「ちょっと押せば落っこちる崖の上で押されるのを待ってる奴ばっかりだ。背中を押してくれって願ってる・・」
「いやだ・・もういやだ!」
「何でなんだよ?俺に分かるように説明してくれよ・・・何で誰も俺を押さないの?何で誰一人俺の痛い所を突いて追い詰めようとしないんだよ?・・・“智、おまえはクズだ!親も死ねって思ってる”て!!!」
瞬間、裕貴は智に振り向いて叫んだ。
「それはおまえがとっくに死んでるからだ!」
「・・・」
裕貴が智の顔を見ると、智も泣いていた。
「だから誰もおまえを押さない・・・いなくなったって誰も気にしない・・おまえは死んでるから!」
お互いに泣きながら向き合って、智は裕貴の言葉を聞いていた。その後ろで慎吾と純も。
「ここでしか生きてると思えないんだろ?どこが自由だ・・可哀想な奴!」
裕貴が言い切った瞬間、叫び声を上げて泣き崩れたのは慎吾だった。純は隅の壁際で泣いている。
智だけじゃなく、それは一人一人への言葉だったから。
智は、ゆっくりと体から力が抜けたように床に膝と手をついて、かすれた泣き声を上げた。子供のように泣きじゃくる智を、裕貴は頬を拭おうともせずにボンヤリ見つめて言った。
「智・・・確かに世界は嘘だらけで汚れてるかも知れない」
智は、うずくまって震えていた。
「でも俺は、そこにいたい。智、俺は…そこで生きる事を選ぶ」
「……」
「智…ダメだ…そんな事やめろよ」
おもむろにポケットからカッターを出して腕に当てようとした智に、慎吾が優しく囁く。智は素直にカッターを床に落として、また泣き続けた。
それから4人は隅にあったソファで寄り添うようにして朝まで眠った。

みんな完璧じゃなかった。
でも、みんな友達だ。
再会した人もいる。
もう会わない人もいる。
だけど、みんなの事を思い出さない日はない。

『裕貴…俺は死ねないよ』
『わかってる、智』

裕貴は家に帰る車の中で、智と交わした最後の言葉を思い返した。
外は晴れた青。今はベッドの上で、智も同じ色を見つめているだろう。
まだ弱いけれど透明な輝きを取り戻した智の瞳の優しさを、裕貴は忘れない。

―END―



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